日本人の死因と中絶
日本人の【死因ランキング】は、毎年厚生労働省が統計を公開しています。
癌(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患などが上位にあがります。
しかし、統計には入れられていませんが、実際には【人工妊娠中絶】で亡くなった赤ちゃんもカウントすると、中絶が日本人の他の死因と比較してもかなり上位に入るということが知られています。
本記事では厚生労働省が公開している統計データをもとに、人工妊娠中絶による死亡の数がどの程度大きいのかを分析していきます。
1990年代まで、日本の死因第1位は「人工妊娠中絶」だった
これは、中絶の仕事について語られた『透明なゆりかご』という漫画の中でも触れられていますが、1990年代の日本では本当の死因第1位は【人工妊娠中絶】だったと言われています。
当時は『堕胎天国』とまで呼ばれていて、海外から日本に中絶手術をしに来日する人までいました。
最も多かった1960年代ごろ。
1953年から1961年までの年間中絶件数は100万件以上にも及びました。
(出典:人口統計資料集2008)
現在の人工妊娠中絶の実施数は約17万人
さて、では現在の日本の人工妊娠中絶実施件数はどのくらい多いのでしょうか。
厚生労働省の統計によると、2016年の人工妊娠中絶実施件数は168,015件でした。
この数字は千葉県習志野市や、北海道帯広市、山口県宇部市、静岡県磐田市など、そこそこ名の取った中規模程度の都市人口と同じです。
下の表でも少しずつ中絶の実施件数は減ってきているのがわかるかと思いますが、ここ10年ほどでさらに減ってきています。
今でもなお、中絶は日本人の死因ランキング3位に入る
2017年の死因ランキングは以下の通りです。
【1位】悪性新生物(がん):373,178人
【2位】心疾患:204,203人
【3位】脳血管疾患:109,844人
【4位】老衰:101,787人
【5位】肺炎:96,807人
この数字を見ると、人工妊娠中絶の実施数が、現在の日本人の死因ランキング第3位に入るということがわかるかと思います。
死亡数は、平成29年に公表された推定値の概数です。
『少子化』が問題視されていますが、皮肉なことに普通の人が亡くなる数と同じくらいに『生まれてくるはずだった新しい命が亡くなっている』ということになります。
(出典:厚生労働省|平成 29 年人口動態統計月報年計の概況、厚生労働省|人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移)
赤ちゃんの7人に1人は中絶されている
中絶の実施数を考えるために、出生数と人工妊娠中絶の実施数を比較して、『本来産まれてくるはずだった赤ちゃんのうち、何%の赤ちゃんが中絶されてしまうのか?』を計算しました。
厚生労働省によると2017年の日本の赤ちゃんの出生数は94 万6060 人です。
出生数が約94万人、人工妊娠中絶実施数が約17万人とすると、合計で112万人の赤ちゃんが産まれるはずだったということになります。
112万人を分母とすると、中絶される赤ちゃんの数17万人は、14%ということになります。
※厳密に言うと、人工妊娠中絶ではない流産のケースなどもありますが、ここでは本来健康に産まれてくるはずだった赤ちゃんを母数として便宜的にカウントいたします。
7人に1人の赤ちゃんが、人工妊娠中絶を受けていると考えると、改めてその実施件数の多さを痛感します。
(出典:厚生労働省|平成 29 年人口動態統計月報年計の概況)
中絶数を減らすための取り組み
中絶数を減らすための取り組みとして、厚生労働省を中心に、10代の人工妊娠中絶を減らすための取り組みや、特別養子縁組、里親などの制度設計・広報が進められています。
また、性教育が普及したことや、コンドームやピルを用いた避妊方法が確立したこともあり、近年日本の中絶実施数は減少傾向にあります。
しかしながら、依然として、
- 年間17万件の中絶が実施されている。
- 死因ランキング3位に入るほどの赤ちゃんが中絶で命を落としている。
- 産まれてくるはずだった赤ちゃんの7人に1人は中絶されている。
という数字を見ると、もっと中絶を予防するための取り組みが必要なのだろうと感じました。
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