【大学中絶物語】Episode.03 産むための準備とおろすための準備

男子大学生の中絶体験記

【知っておきたい妊娠と中絶のこと】

筆者(ユウスケ氏)が大学生の時に、彼女の妊娠中絶手術を共に経験した時の記録を、男性側の目線で書き記した体験談です。

少しでも、妊娠された方や中絶をお考えの方にとって、後悔のない選択ができる手助けになれれば幸いです。

1週間以内に迫られる決断

中絶をする場合、初期中絶といって、妊娠初期の中絶が望ましいとされる。

リスクが少なく済むからだ。

産むのか、おろすのか。

その決断まであと1週間ほどしか時間はなかった。

僕と彼女は、産むための準備とおろすための準備を引き続き進めていくことにした。

彼女の体調が不安定であったことと、話し合える時間をなるべく取るために彼女の家でしばらく寝泊まりすることにした。

子どもを産むために必要なこと

産むためには、まず出産をすることと、その後の育児を生涯に渡って行うことが必要である。

至極当たり前のことだが、非常に大変なことである。

出産するためには、まず結婚するべきである。

これは婚姻届を提出すればすぐにできるはずだ。

そして、彼女は学生生活の継続が困難になる。

僕は、今のアルバイトより何倍もお金を稼ぐ必要がある。

もしかしたら、大学を辞めるべきなのかもしれないが、大学は絶対に卒業して欲しいというのが彼女の強い願いだった。

治験のバイトや日雇いバイトや長期インターンの求人などをチェックするようになった。

彼女は大学院卒業後の内定先が決まっていたが、出産するとなれば入社時期をずらすか内定取り消しになることは間違いない。

出産すると決めた時点で会社に連絡する必要がある。

出産の時、国からの給付金などもあるとは言え、25万円ほど費用がかかる。

その後は、育児のために、赤ちゃん用のオムツや哺乳瓶、洋服やおもちゃなど、様々なものが必要になる。

そして、保育園や幼稚園に入るタイミングになれば、もっとお金はかかるようになる。

経済的に厳しい生活は余儀なくされるだろう。

また、お互いの親友にも相談した。

法律学専攻の友人から、嫡出子と非嫡出子の違いについて教えてもらったりもした。

愛人の子として産まれたという友達に、「色々あったけど、でも、中絶されずに産まれてこれて良かった」とも言われた。

出産や育児についての情報サイトを読み漁り、メルマガなどにも登録して情報を集めた。

人工妊娠中絶をするために必要なこと

おろすために必要なことはとてもシンプルだった。

約20万円の手術代。

それさえあれば、1日ですぐに終わる。

出産するとなった場合の「必要なこと」のオンパレードとは大違いだった。

多くの人が、中絶という選択肢をとってしまうのも頷けた。

ただ、勘違いしないでほしい。

一生十字架を背負うことになる。

それは、出産し子育てをしていくことよりも、よっぽど大変で辛く重く心にのしかかると思う。

僕らは、中絶するとしても、子どもに名前をつけて、ちゃんと供養して、一生その子の命と向き合って、子どもの分まで全力で生きようと約束した。

それが一番の準備だったと思う。

僕は、人の命より大切なものはないとか、人を殺してまで自分の人生を豊かにしたいとは思わないとか、そんな綺麗ごとをたくさん言って、産むための準備を必死に進めていた。

でも、それを現実社会の中で実現していくことはとても難しい。

綺麗ごとだけで成立する世の中ではない。

最大の葛藤

産むのが自分ではないということ。

その事実とどう向き合うべきかにとても悩まされた。

彼女の人生の方がよっぽど大きな影響を受けてしまう。

社会人1年目のキャリアを普通に歩めるか、妊娠して出産して主婦として1年目を迎えるのかでは大違いである。

男性として、自分で決断し、責任をとりたいという思いはあった。

しかしながら、自分より相手の人生を狂わしてしまう意思決定を、自分よがりにすることはできないという葛藤があった。

彼女と話し合い、寄り添い続けていくしかなかった。

彼女の心理状態は非常に不安定だった。

誰にも相談することはできない。

真剣に向き合おうとすればするほど、彼女を深く傷つけることにもなる。

もちろん、僕だって辛くないわけではない。

苦しい時間を過ごしていた。

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