男子大学生の中絶体験記
【知っておきたい妊娠と中絶のこと】
筆者(ユウスケ氏)が大学生の時に、彼女の妊娠中絶手術を共に経験した時の記録を、男性側の目線で書き記した体験談です。
少しでも、妊娠された方や中絶をお考えの方にとって、後悔のない選択ができる手助けになれれば幸いです。
落ち着いて聞いて
大学2年生の頃、僕は2歳年上で大学院生の女性と付き合っていた。
1月末のある日。いつも通り大学の授業を終えて、サークルの仲間とミーティングしている最中に突然LINEがきた。
陽性だったという。
その連絡を見た瞬間、心臓の鼓動が一気に強くなって焦燥感にかられた。
頭が真っ白になるとはこういう感覚なんだなと初めて体感した。
ちょっと急用ができたと嘘をついてミーティングを抜け出し、彼女のもとへと飛んで行った。
電車で数十分の移動中、スマホで妊娠についてひたすらに調べていた。
妊娠検査薬「陽性」の意味
妊娠検査薬とはなんなのか?
陽性の場合、どのような対処が必要なのか?
妊娠している可能性があるという当たり前の現実を、すんなりと受け入れられるはずもなかった。
彼女と会うと、驚くほど冷静で、落ち着いていた。
きっと、僕に話すよりずっと前に、動揺するフェーズは乗り越えていたんだろう。
後から聞いたことだが、僕に陽性だったことを伝えずに、1人で全て抱えて何事もなかったかのように、中絶することも本気で考えていたらしい。
とにかく話を聞いて、二人で調べて、どうすべきかを考えた。
まずは、本当に妊娠しているのか否かを産婦人科に行って明らかにすることが先決だという結論に至った。
すぐに近くの産婦人科を調べて向かった。
何かの間違いであってほしいと思っていた。
産婦人科で明らかになった妊娠の事実
地元の小さな産婦人科クリニックへと駆け込んだ。
当たり前だが、産婦人科に行くのは初めてだった。
中には女性の患者さんしかいなかった。
きっと周りの人から見たら、自分たちがどのような状況なのか安易に想像がついたと思う。
冷徹な受付を済ませて、少し待った後にすぐ検査が始まった。
結果は妊娠していた。
彼女と同席して、医師からの説明を受けた。
エコーの写真で赤ちゃんがいるのを見せてくれた。
聞いてもいないのに、
と告げられた。
中絶するなら早ければ早い方がいい。
産むなら、ちゃんと話しあってお互いの両親とも相談してきなさい。
シンプルに二択を提示され、医学的な説明と言うよりは淡々と短めに産む場合とおろす場合にやることを話された。
ただただ、黙って聞くしかなかった。
中絶するなら、体への負担が低い初期中絶にするため2週間後には手術すると言われた。
産むのか?おろすのか?
産婦人科での診療を終え、妊娠しているという事実が明らかになった。
僕らはカラオケに入って相談することにした。
周りの人に話を聞かれずに二人で話せる環境がよかったから。
産むのか、おろすのか。
僕は産むことしか考えていなかった。
彼女はおろすことしか考えていなかった。
だから、たくさん話し合った。
そんなことを言われた。
今思うと、これが彼女を余計に深く傷つけることになったと思う。
たった1日で、日常は非日常へとガラリと変わった。
男なら産むための準備を全力でするべき
僕は、唯一の親友だったサークル仲間にだけ、この事実を相談した。
彼女が妊娠していること。
産むか、おろすか、悩んでいること。
どちらにしても、もうサークルでの活動を続けるのは難しいこと。
僕は当時、執行代としてサークルを束ねる幹部候補の1人だった。
親友だったからというのもあるが、幹部をできないことへの申し訳なさが先に立ち、すぐに相談した。
どんな反応をされるのか怖かったが、彼はとても誠実な人間なので優しさと厳しさのある言葉をかけてくれた。
妊娠中、女性は生理を重くしたような状態になってしまう。
僕の彼女も、すでに体調が悪くなりがちで、熱っぽく、食欲も偏りが出始めていた。
冷静に必要な情報を調べて、産むための準備ができるような状態ではなかった。
彼女は戦っている。
産むにしても、おろすにしても、それは彼女の体の中で起こること。
男はそれを全力でサポートすることしかできない。
その責任を最大限全うするのが使命だと思った。
タイムリミットは2週間
後悔したり、現実逃避したり、落ち込んだりしている暇は1日たりともないと思った。
その日から、産むための準備とおろすための準備を全力で始めた。
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