胎児の火葬は可能?不可能?
妊娠12週未満(4か月)の胎児火葬の現状は、どの様になっているのでしょうか?
可能?不可能?
可能であればその方法は?
とある依頼をきっかけに徹底的に検証する機会がありました。
同じお悩みをお持ちのご遺族にとって少しでもお役に立てるよう、周辺事情をまとめてみました。
両親からそんなご依頼をいただきました。
では、実際この様なことは可能なのでしょうか?
12週未満(4か月)の胎児の扱い
古い時代は週数にかかわらず、胎児は通常の廃棄物として処理されるケースは決して珍しくなかったことは想像に難くありません。
しかし、時代が進むにつれて、そうした考えは是正され、妊娠12週以上(4か月)以上の胎児に関しては「死体(またはそれに準ずるもの)」として、法律により火葬が義務付けられました。
さらに、平成16年に12週未満(4か月)未満の胎児を、医療機関が不法に投棄していた事実が判明しとことにより、法律の在り方が大きく変わりました。
(1) 胞衣・産汚物に係る条例を定め、この条例により許可を得た収集業者が医療機関から妊娠4か月(12週)未満の中絶胎児を廃棄物とは別に収集し、許可を受けた処理場で焼却する。
(2) 胞衣・産汚物に係る条例を定め、この条例により許可を得た収集業者が妊娠4か月(12週)未満の中絶胎児を収集し、火葬場で焼却する。又は、この条例により医療機関が火葬場で焼却する。
(3) 市町村の指導等により、医療機関が妊娠4か月(12週)未満の中絶胎児を火葬場で焼却する。
つまり12週未満の胎児であっても、その他の産業廃棄物とは分けて、専門業者が尊厳をもって処理するようにしましょうね。
ということになった訳ですが、しかしながら依然として大きなくくりでは「産業廃棄物」であることには変わりなく、よって法律上は火葬の義務も権利も持ち合わせていません。
あとは現場対応に任せるといった所ですが、では実際現場サイドの事情はどの様になっているのでしょうか?
当該機関の言い分
火葬場曰く「火葬許可書があれば火葬できます。なければ来ません」
とのこと。
遺体を火葬場で火葬するためには役所から発行される、火葬許可証の提出が必須になります。
通常の遺体であれば、病院から発行される死亡診断書か、警察等の専門機関を通して発行される死体検案書に死亡届を添えて、管轄する役所に提出をすることで許可書を取得することが可能です。
火葬場としては許可書のない、文字通りどこの馬の骨とも分からない遺体を、勝手に火葬するわけにはいきませんから、至極当然の回答ですね。
では病院で死亡診断書を発行してもらえば良いんじゃない?
全くその通りなのですが、それが問題です。
誕生してしまえば、0才だろうが100歳だろうが、死亡診断書は100%発行されます。しかし、胎児の場合は12週の壁が存在します。
先述の通り、妊娠12週以上の胎児の場合は法律で火葬場義務付けられていますので、死亡診断書(又は死産証明書)が発行されます。(死亡診断書なのか死産証明書なのかは週数とその病院によって異なりますが、基本同じものです)
しかし、12週未満の死産児の場合は正式には「流産」となる為、【死亡診断書】の類は一切発行されません。
「死産」は法律上【人】として認識された状態、「流産」は【人】として認識される前の状態といったところです。
義務が無い以上、どこの病院も発行しません。
実際に付き合いのある産科・産婦人科の病院に片っ端から連絡しましたが、結果は全滅でした。
つまり、通常の手続きによる火葬は不可能ということになります。
ちなみに遺体を持ち帰ることについては、認めている病院が大半だったという印象でした。
藁をもすがる思いで警察にも連絡してましたが、
「事件性がない以上、警察が介入することはできない」
との回答でした。
まぁ、そりゃそうですよね・・・
もうここまで来たら、お上に直訴するしかない!
何とかしてくれ!
火葬を管轄する厚生労働省に電話をしてみました。
しかし、「病院が書類を発行してくれれば、火葬はできるが、病院側が拒否した場合は法律上の規制がないので、火葬はできない」
との回答でした。
この時点で、完全に通常火葬の道は断たれてしまいました・・・
ペット火葬
倫理的・精神的にどうかは別として、もう残された道はペット火葬しかありません。
手間だけかかって、うちには一円の利益もありませんが、もう会社の儲けとか、そんなの関係ありません。
この世に生を受けることはなかったとはいえ、一度はおなかに宿った命。何とか普通に供養したいというを叶えてあげたい。
インターネットで片っ端からペット火葬業者に電話しましたが、曲がりなりにも人体の火葬はできないと、都内の業者は全滅でした。
千葉県本光寺で火葬が可能
半ばあきらめかけていましたが、千葉県市川市にある本光寺でペット火葬という扱いではありますが、12週未満の胎児でも火葬してくれることが判明致しました!
即、病院に電話をして遺体を遺族が引き取る可能性があることを伝えました。
その後ご遺族に本光寺をご紹介させていただき、後の判断はご遺族に任せることにしました。
最近、「妊娠12週未満の胎児を火葬してください、供養してください」というお問い合わせが多く寄せられます。自宅で妊娠12…
後日談
経過のご連絡は結構ですと、丁重にお断りしましたが、
「無事火葬が終了し、本光寺の水子供養墓に納骨できました」
との報告をいただきました。
とても嬉しい出来事でした。
遺骨と供養
親として遺骨の残り方と、その後の供養も非常に気になるところでしょう。
遺骨は残るのか?
親としてやはり一番気になることは、遺骨は残るのか?残るとすればどの程度残るのか?ということではないでしょうか。
しかし残念ながら遺骨は残りません。
上記の理由から経験はありませんが、今までの経験から言っておそらく東京都荒川区にある町屋斎場や、葛飾区にある四ツ木斎場の胎児専用炉でも、骨を残すことは非常に困難を極めることでしょう。
それが性能等が著しく落ちるペット用の火葬炉ともなれば、言うまでもありません。
本光寺のHPにも記載があるように、灰がひとかけらくらいしか残らないことは仕方のないことでしょう。
供養と埋葬
火葬場に提出された火葬許可書は、どうなるのでしょうか?
応えは火葬場の印鑑が押され、ご遺骨と一緒に返却されます。これがいわゆる埋葬許可書です。
埋葬許可書が無ければ、原則埋葬も散骨もできません。(もちろんひとかけらの灰ですから、散骨したところで、お咎めはないでしょうが、そこは自己判断でm(__)m)
正式な手順を踏んで、先祖代々の墓に納骨することは叶いません。
本光寺の様な水子供養墓に納骨するか、自宅に安置して供養する、あるいは専用のペンダント等に入れて身に着けるといった形の供養になるかと思います。
まとめ
死者に対する考え方は、千差万別。
望まない妊娠で「後のことはお任せで」という人もいれば、気持ちはあるが金銭的な理由で、供養を断念する人もいます。
そんな中で、お金がかかってもきちんと火葬や供養したいというご遺族も少なからずいらっしゃいます。
そうした人達の思いに応えられるよう、産業廃棄物やペットではなく、【人】として扱う選択肢が選べるよう、政府には早急に法整備を整えてもらいたいものですね。
何れにせよ、葬儀にはお金がかかります。
葬儀屋の思考回路からすれば、【(お金のかかる)火葬や葬儀はしなくて済む】となるわけで、【(むしろお金をかけてでも)火葬したい】という思考は全く存在しませんでした。
遺族からの申し出に非常に大きな衝撃を受けた訳ですが、改めて葬儀について考え直す機会を与えていただきました。
大切なお子様の死を無駄にしない為にも、少しでもご遺族の気持ちに寄り添える葬儀屋になれたらと思っております。
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