自死遺族からのメッセージ
自死(自殺)は自殺者数の何倍もの自死遺族を生む。
自分自身は死んでしまえばそれで終わりかも知れないが、残された自死遺族の苦しみは、時間が解決してくれることはない。
死ぬまで続くことになるのだ。
自分の大切な家族がある日突然自らその命を絶つ。
『自死遺族』と言う存在は、自分とは関係ない、遠い存在だろうか?
大半の人間にとって、答えは『YES』だろう。
しかし、年間3万人の人間が自死によりこの世を去る日本において、誰もが自死遺族になる可能性は十分にある。
『私の旦那は、自殺したんです。首吊りでした』
最近懇意にしている年配女性から、そう聞かされた時は正直言葉に詰まった。
以前チラッとご主人は事故で亡くしたと聞かされていたが、デリケートな話だったため、それ以上、私から深く突っ込むことはしなかったのだ。
ぽつりぽつりと静かに当時の話をしてくれる彼女の横で、こんなに身近に自死遺族がいるとは思ってもみなかった私は、面食らってうまく言葉を繋ぐことが出来なかった。
葬儀屋でありながら・・・
殺人犯と呼ばれた日々
身も凍るほど恐ろしいその知らせが届いたのは、大切な仕事の真っ最中でした。
私の携帯に何度も着信が入っていたのですが、すぐに電話に出ることが出来ずじまい。仕事がひと段落して折り返すと、聞き覚えのない他県の警察からでした。
『ご主人が○○市の山の中で、ロープで首を吊った状態で発見されまして・・・死亡が確認されました』ですって。
頭が真っ白になり、その後のことはあまり覚えていません。
周囲の人間に付き添われ、警察の霊安室で主人と対面したのですが、紫色になり、素っ裸でステンレス台の上に寝かされている遺体を見て、即倒しました。
今まで、実物の遺体なんて見たことがなかった人間が初めて見た遺体が、それでしたから…
遺書が残っていて、原因は仕事だったようですが、それからの日々は、茫然自失・激しい後悔・先行きへの不安・死んだ本人は良いけど、私と子供たちを遺して逝った身勝手さへの激しい怒り・・・
そうした考えや感情が、グルグルグルグル・・・目まぐるしく襲ってくる感じでした。
でも一番辛かったのは、先方の親族から殺人犯扱いされたことでした。夫を救えず、見殺しにしたとんでもない妻だとか、追い詰めて殺した張本人だとか、有ること無いこと好き勝手言われてしまって…
さらに、一部の近親者だけの秘密にしていたはずなのに、噂はあっという間に広まって、憎しみ・哀れみ・同情・好奇・・・周囲に渦巻く様々な感情に翻弄され、人間不信になってしまいました。
時代が時代だったので、葬儀は二日間(お通夜・告別式)執り行いましたが、相手方の親族の激しい憎悪の目と、参列者のヒソヒソ話にさらされて、それはもう拷問、生き地獄でしたよ。
一番つらい立場の私が何でこんな目に遭わなきゃならないのかって、それは惨めでね…
肉体的なダメージも大変なモノでした。
彼を救えなかった自分への戒めと、私だけが幸せになる訳にはいかないという思いから、最終的には食べることも飲むことも出来なくなってしまって、体はボロボロ。全身激しい湿疹が一年近く引きませんでしたかしら。
それから皆さん遺書を気にするでしょ?有ったのか、無かったのか。有ったならば、何が書かれていたのかって。でもあれはダメ。
読まされるこちらの立場も考えてほしいわよ。後悔と悲しみと、せいぜい憎しみと絶望くらいしか残らないから。どうせ死ぬなら、書かないでほしかった。
捨てることも、取っておくことも人に見せることも出来ないから、骨壺に入れて、納骨するしかなかったですけどね。
もうかなり前のことになりまして、今では少しお話しすることが出来るようになりましたが、やはり言葉に出すと辛いですね。
でもあの地獄の様な日々の思い出は、私という人間から離れることはありません。これは墓場まで持っていかなければならないと、覚悟を決めていますよ。
終始穏やかに話していた彼女が、二度ほど感情をあらわにした瞬間があった。
『彼を救えなかった自分への戒め』
『死んだ本人はそれで良いけど、残された私たちは地獄』
何十年経っても消えない、後悔と憎悪・・・
グラスを持つ手が小刻みに震えていたのが、私にとっては印象的だった。
遺された自死遺族の慟哭
自分の命をどうしようが自由。
そんなことを言う人達がいる。
しかし、後には遺される人がいる。
あなたは死んで、逃げてしまえば一番楽かも知れない。
でも、その死を背負って死よりも苦しい地獄を、何十年も生きていかなければならない人がいるかも知れない。
その事実は絶対に無視してはいけない!
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