地震などの突然の災害時に支援が届くまでの間をしのぐ、食糧や水、懐中電灯やラジオなど・・・避難・防災グッズをセットにした防災バックやリュック。
どうやら今後はそこにサランラップやクレラップが加わりそうです。
旭化成がサランラップ10万本を熊本地震の被災地に寄付すると発表しました。
思わず「サランラップ?」と思ってしましましたが、実はサランラップとは戦争での使用を想定して作られたものなんです。
その歴史と災害時の便利な使い方をまとめてみました。
サランラップとは?
樹脂フィルムでできた食品用ラップフィルム。
サランラップ自体が食品用ラップフィルムの総称のように思われていますが、この手の樹脂フィルムを最初に開発したアメリカのダウ・ケミカルが世界各国で持つ商標(商品名)です。※日本ではダウ・ケミカルと旭ケミカルの共同保持。
素材
ダウ・ケミカル社が最初に使ったのはポリ塩化ビニリデンですが、現在はポリ塩化ビニリデンの他、ポリエチレンやポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテンなど様々です。
サランラップの歴史と用途
先述のとおりサランラップは、元々食品を包むなど平時の日用品では無く、有事(第二次世界大戦)の軍事品として使用されていました。
アメリカ軍をはじめとする西側諸国に認められ、様々な軍事品に使用され、拡大していきました。
ちなみに「サラン」とはサランラップ開発時のダウ・ケミカルの重要人物「ジョン・ライリー」が、自らの妻・サラ(Sarah)と娘・アン(Ann)の名前をつなぎ合わせて作った造語(英語版ウィキペディアより)
尚、日本語のウィキペディアには後述のレタスを包んだ2人の妻となっており、どちらが正しいかは不明。
戦闘機の表面保護
ポリ塩化ビニリデンの本格使用はダウ・ケミカル社がスタートさせ、最初は戦闘機の保護スプレーなどに使われていたようです。
湿気防止フィルム
銃や弾薬等を梱包し、湿気から守る保護フィルムとして使用
靴のインソール(中敷)
ジャングルなどにおいて、兵士の足を水虫や水疱、熱帯性の潰瘍などから守るために使用。ポリ塩化ビニリデンが絶縁体であったことも使用のひとつ。
衛生的とは程遠い戦地で、靴の外から侵入する水や菌を防ぎます(Photo by U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Cohen A. Young)
蚊帳
ジャングルで野営する際、マラリア熱を媒介するマラリア蚊かどから兵士を守るために使用。
衰退と復活
軍用品としての役目を終えるとチーズ等を包む食品フィルムに転向したが、あまり浸透はしなかったようです。
そんなある日ピクニックに出かけた2人のダウ・ケミカルの従業員。彼らの妻がレタスをクレラップに包んで持参。極めて鮮度が落ちやすい食品の保護に、抜群の効果を発揮することが判明。大ブレイクを果たしました。
災害とサランラップの関係
有事に使うことを前提に開発されたサランラップですから、災害時に抜群の力を発揮するのは当然です。
2011年3月14日に旭化成が50万本のサランラップを寄付しましたが、被災者から非常に喜ばれたそうで、熊本地震への10万本寄付につながったようです。
使用用途
ネットでは過去の経験などを元に様々な使い方が提案されています。
食事の備品
水が少なく衛生状況も良くない被災地。ラップを巻いた皿の上に食べ物を乗せれば、洗い物も必要ありません。
また、配る時、食べる時、ラップ越しに食品をつかめば、手が汚れていても衛生的に食事をすることができます。
保温
まだまだ朝夕は気温が安定しない季節。車中泊など屋外で避難生活を続けてたり、家に帰れてもライフラインが回復しておらず、寒い思いをしている人も多いはず。
ラップを体に巻き付ければ、抜群の本力で体温の低下を防いでくれるでしょう。
医療品
怪我の治療が十分にできず、破傷風や感染症リスクが高まる被災地の負傷者。一時的な傷口の保護など、医療品が十分でないのであれば応急処置に役立ってくれるでしょう。
ネットでは骨折の固定に使えるのでは?といった声も。
ヒモやロープ
そのままではもろいフィルムですが、長く伸ばしてねじればヒモ、いくつもの紐を合わせて編み込めばロープにもなります。
その他
- クシャクシャにすれば体や食器を洗うスポンジタワシ替わり
- 油性マジックで字を書いて、どこにでもはりつけられるので伝言板や注意事項の張り出しに。
- 排泄物や生ゴミなど不衛生な物を包んで埋める
まとめ
普段は何気なく使っている食品用ラップですが、こうして見ると深い歴史と頼もしい力を持っており、思わず見直してしまいました。
有事の軍事品として作られた樹脂ラップが、こうして通常の使われたかを離れて、災害時に本来の使われ方をしているというのは、不思議な気がしますね。
ラップを必要としている被災者の元にタイムリーに届けられるなら、メーカーとしても嬉しい限りでしょう。
東日本大震災の教訓を生かしきれず、支援物資が倉庫に山積みの状況だという情報も入ってきています。
行政と企業が一体となり、必要な物を必要な時に必要な分だけ迅速に届けられる体制作りに期待したいものです。
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