お金と時間を浪費する「ギャンブル依存症」
パチンコやスロットは、時間消費型の娯楽と言えます。
遊びにかかる時間は長く、消費する金額は時間に比例して大きくなっていきます。
競馬のように、一レースに賭けるようなものではありませんね。
そしてパチンコやスロットって、消費する時間に対して動く金額が小さいんですよ。
仮に一日中パチンコを打とうが、スロットを打とうが、どんなに大負けしても30万円は無くならないですよね?
30万は大金ですか?
30万円は生活感覚からすると大金ですが、ギャンブルをする者にとっては、そうでなかったりします。
一瞬で多額のお金を動かせる競馬、株式、FXなどと比べたら、パチンコやパチスロなどまさに遊戯でしょう(パチスロの正式名称は回胴式遊技機)。
しかし遊んで楽しいからといって、負け続けてもずっとやめないのであれば、多額のお金が無くなってしまいます。
1日1万円ずつ負けていったって、一年で365万円ですからね。
収支表をつけていない人は、結構恐ろしいことになっている可能性があります。
金銭的な意味での損失も恐ろしいですが、お金と同じくらい無駄に無くしていっているのが時間です。
若い人ほど時間の無駄はあまり考えないですが、これは大きな問題なのですよ。
考えてもみてください。自分の一生が例えば80年だったとします。
時間は増えないし戻りません。
時は金なりといいますが、金では買えないのでプライスレスです。
その有限な時間を、遊技機にどんどん奪われていっているのが、ギャンブラーの実態です。
- 予備校時代にギャンブルで受験失敗
- 大学時代にギャンブルで留年後中退
- 会社員時代にスキルを身につけずにギャンブル
- 結婚後に妻子を放置してギャンブル
- 老後の貴重な時間で寂しくギャンブル
など、ギャンブルで人生を無駄にする例は、たくさんあります。
お金の浪費の影響はわかりやすい
お金の浪費の問題は、とても深刻なものです。
1日に何万円もギャンブルに使うような人が、食費に困っていたりします。
お刺身を食べたくても、ギャンブルに使ってしまうから、それすら買えないのです。
ギャンブルをしなければ食べられるのに、退屈で死んじゃうなどと言って、やめられないんですね。
貯金は300万円あったって安泰ではないのに、借金は300万円あれば破滅が見えます。
300万円も借金があったら、月5万くらいは利息がつきますしね。
お金が無くて借りているくらいなのに、それを返すことがどうしてできるのでしょうか?
慢性的な金欠に借金は命取りです。借りる時点で返す当てがないのです。
時間の浪費をしている最中はそれに気付かない
時間の浪費は、お金のそれに比べると切迫はしていませんが、遅効性の毒のようなものです。
気がついたら、取り返しがつかないくらい貴重な時期を無駄にしています。
ギャンブルに夢中になっているのは、時間をギャンブルに奪われているのと同義です。
例えば、十年間で一番夢中になったのがギャンブルなのであれば、その人はギャンブルしかしていないということです。
他のこともやっているでしょ、って思うでしょう?
でも身が入っていないものは、その人にとって無いのと同じなんです。
例えば、ギャンブルで負けて早く帰って来たから、その後の時間は家族サービスに費やしたとします。
でもこれはその人の本意ではないんですよね。
その人は調子良くずっとギャンブルをしていたかったわけだから。
第二志望にされた家族の側の気持ちも、嫌なもんでしょう。
ギャンブルの方を、自分より優先したわけですから。
結局そのギャンブラーは、ギャンブルに気持ちを向けた時点で、それ以外の選択肢を消去したことになるんですよ。
結果、自分の時間は消え去り、だけど周りの時間は流れているという、時の流れに置き去りにされるようなことになります。
時間を浪費している間は気づきませんが、立ち直って充実した日々になってくると、無駄なことをしていたと気づきだします。
しかし失った時間を振り返っても、もう戻ってはきません。
浪費したお金と時間
30代半ばの知人(20歳頃からギャンブルを始めた)に、今まで浪費したお金と時間を概算してもらいました。
もっとも記録していたわけではないので、ズレはあるかもしれません。
※算出方法は省略します。
お金 | |
大学時代 | 120万円 |
社会人時代(約10年) | 670万円 |
FXでの損失 | 400万円 |
合計 | 1,190万円 |
時間 | |
大学時代 | 8,500時間 |
社会人時代(約10年) | 8,550時間 |
合計 | 17,050時間(24時間で割ると約710日) |
この結果に、本人は大きなショックを受けていました。
こうやって見ると、やはり時間の損失のほうが、遥かに大きいですね。
この時間を有効に使えば、何かのプロになれると思います。
勝者は限りなく勝利を確実なものに近づけてから戦いに挑む
ギャンブラーには、かっこいいイメージもあると思うんですよ。
さすらいのギャンブラーのように、自由気ままに流れ生きていくだとか、命知らずで危険な賭けに出るだとか。
でもそういうのは、ギャンブラー本人が勝つべくして勝つから、かっこいいんですよね。
100%運頼みの一か八かの賭けに出るのは全く違うわけです。
戦略的なギャンブラーは、勝利に向けて少しでも有利に働くように仕向けておくとか、敗北要因を除外しておくとか、勝つ可能性を少しでも高めておいてから勝負に挑むのです。
そうして手にした勝利は、努力の賜物でもあるわけです。
福本伸行氏の漫画『カイジ』などはそんな感じでしょう。
強迫的ギャンブラーは賭けること自体に満足する
しかし強迫的ギャンブラー、またはギャンブル依存症患者は違います。
彼らは勝つ見込みのない戦いをします。
ただ賭け事をしたい、勝負をしたいだけなのです。
パチンコやパチスロで適当な台に座って勝負をするのは、勝てそうな台が見つかるのを待つことができないのです。
そして大負けします。
彼らの財布には間違いなく、大きな穴があいています。
そうとしか思えないぐらいに、お金を次から次に失っていきます。
彼らのもとに行くことになったお金たちはかわいそうです。
ろくでもない浪費をされ、捨てるかのごとき扱いを受けるのですから。
簡単なくじに例えてみると
例えば、100円を払ってくじを引き、当たりが出れば1,000円もらえるとしましょう。
この場合、10コに1コ当たりが入っていればギャンブラーは理論上、損も得もしません。
10回くじを引くために1,000円払っても、10回に1回は1,000円を手にすることができる計算だからです。
もちろん一回目で当たりが出たら得をしますし、何回くじを引いても当たりが出ないことも有り得ます。
期待値はプラスマイナス0円ということで、くじを引くメリットは無いと言えます。
期待値プラスの場合
次に、5コに1コ当たりが入っている場合を考えてみましょう。
この場合、10回くじを引くために1,000円を払うと、2回当たりを引くことが見込めるため、くじを引けば引くほど儲かる計算になります。
この場合くじを無限に引くことができれば大金持ちになれます。
このような勝ちが見えているような勝負に徹する者も、ギャンブラーの中にはいます。
彼らがしている勝負は、ギャンブルというよりは、投資に近いものだと言えます。
彼らはギャンブルに対して興奮しません。
ただ冷静に【仕事】として期待値プラスの行動を積み重ねるのです。
期待値マイナスの場合
最後に、20コに1コしか当たりが入っていない場合を考えます。
この場合、20回に1回にしか当たらないので負けは明白です。
やっと当たりを引き当てて1,000円手に入れたときには2,000円(くじ20回分)使ってしまっているのが普通なのですから。
この勝負は、期待値大幅マイナスです。
もちろんこの勝負に挑んだからと言って、負けが確定するわけではありません。
運よく1回目や2回目で当たれば、プラスになるわけですからね。
たまたまうまくいくことはあるでしょう。
でも、いつもそうなる訳ではありません。
長い目で見て、ずっとこのくじを引き続ければ必ず損をします。
それが期待値マイナスの勝負です。
自ら進んで負けに行く人
ギャンブル依存症の理不尽な行動
ところで、上に挙げた中で3つ目の期待値マイナスの勝負を繰り返す大馬鹿者がいます。
それがギャンブル依存症の人です。
彼らは期待値マイナスの勝負でたまたま勝った時、それは運のおかげでなく自分の実力だと錯覚します。
そして長い目で見た時に、自分のお金が減っていることに気付かないのです。
彼らは目先の勝負にしか注意が向かないので、期待値がマイナスで不利な状況でも【実力】とやらでその困難を克服しようと考えます。
だから、高い金利を払って借金してでも、テラ銭を取られても構わず勝負します。
ギャンブルは快楽
賭けたいだけの人は、どんなに不利な条件でも勝負をしてしまいます。
それは、ギャンブルをすることが依存症の人にとっては、快楽を得る行為だからです。
最終的には勝とうが負けようが、どちらでもいいのです。
この世にあるギャンブルは、全てプレイヤー側が勝ちにくいようにできているので、有利な条件に拘ると、勝負をする機会が減ってしまいます。
だから、そのあたりには目を瞑ってごまかし、己の腕一本で勝とうとし、玉砕していきます。
負けへの行進を始める前に
ギャンブル依存症の人は、賭けへの歩みを始めたら止まれませんから、とにかくギャンブルを己から遠ざけることが大切です。
上記で説明したようなことは、頭では理解できても行動に反映できませんからね。
悲しいですが、ギャンブルをコントロールして適度に楽しむことができないのが、ギャンブル依存症なのです。
ギャンブルをやめるためには
自分のギャンブルを止められない人は、まずは自分が依存症だと自覚し、いったんギャンブルから離れるようにしましょう。
意思の力でやめることなどは不可能な病気なので、できれば第三者を頼りましょう。
例えばギャンブラーズアノニマスに行けば、同じような仲間がたくさんいますので、自分の行動に歯止めをかけやすくすることができます。
それでもやめられなければ債務整理
借金がたくさんあるのにギャンブルを止められなければ、それ以上借金できないようにするという手もあります。
一つは信用情報機関に申しでること。
ただし、自分で申し出てもすぐ解除してしまうのがオチなので、第三者が行わなければ意味がありません。
もう一つは、債務整理をすること。
債務整理にも種類がありますが、借金が完全に無くなるものもあります。
債務整理は色々デメリットもあって、安易におすすめはできないのですが、借金が帳消しになる以上に、(ブラックになるため)新規に借金ができなくなるのは効果絶大です。
どんな人でも諦めてギャンブルを止めざるを得なくなりますから。
ギャンブル依存症という病気について
依存症というのは、本人の気持ちでどうにかなるものでは無く、病気である事を理解しなければなりません。
依存症は本人だけではなく家族も含めて、肉体的にも精神的にも経済的にも、さまざまなものを奪っていく特徴があります。
自身は病気になっている自覚が無いのも大きな特徴です。
依存症を正しく理解する
依存症問題は自力で解決したり、自分で責任を負ったりすることが難しいのが現実です。
ですので、家族に大きな迷惑がかかり、家族の健康も奪われてしまう、ということが多く起こります。
家族は、依存症にかかっている人が【病気】であるということに気付かず、『私が何か一生懸命に頑張れば、彼が良くなるのではないか?』と思いがちです。
しかし、依存症という病気に関して、頑張るという言葉は最もご法度です。
医学的なアプローチから、長年かけて向き合っていく必要があります。
これは、ニコチンやアルコール依存症と考え方は根本的には同じです。
ギャンブルをやめられなくなってしまうのがギャンブル依存症
ギャンブル依存症は、ギャンブルにのめり込んで、自分でコントロールが出来なくなる精神疾患です。
これにより、日常生活や社会生活に支障が生じます。
また、ギャンブル依存症から派生して、うつ病を発症するなどの健康問題や、ギャンブルを原因とする多重債務問題といった経済的問題に加えて、家庭内の不和などの家庭問題や、虐待、自殺、犯罪などの社会的問題を生じることも多々あるので注意が必要です。
ギャンブル依存症は、適切な治療と支援により、再び普通の日常生活を送ることが可能になります。
ギャンブル依存症でお悩みの場合は第一に専門の外来へ
しかし、先にも記載した様に本人自身が『自分は病気ではない』などとして現状を正しく認知できないケースが多く、放置しておくと症状が悪化するばかりか、借金の問題なども深刻になっていくことが懸念されます。
そこで、ギャンブル依存症に関する注意事項や対処に困った場合は、まず第一に専門の外来に行く事が必要です。
これには、本人だけでなく、家族の参加も必要になります。
また、ギャンブル依存症対策については、ギャンブル依存症対策基本法に基づき設置されたギャンブル依存症対策推進本部の総合調整の下、各省庁が連携して推進しております。
ですので、各地域で対応窓口があるので、まずは訪問してみる事をお勧め致します。
ギャンブル依存症患者が併発させやすい症状
ギャンブル依存症において、更に別の病気を引き起こす可能性がある事を話しましたが、一番多いものとして、借金から来る家族との不和による鬱病、社会的復帰が困難になり社会との断絶や孤立化から来る鬱病があります。
また、アルコール依存やニコチン依存といった、更なる依存症を引き起こして行くケースも少なくありません。
ギャンブル依存症の人はそうで無い人に比べて、他の依存症にかかりやすいというデータもあります。
競馬場やパチンコ屋等で、タバコの吸い殻が凄いのも、それを物語っています。
ギャンブル依存症は脳の病気
近年、ギャンブル依存症は、一種の脳の病気であるという研究発表もされています。
ギャンブル依存症者は、ギャンブルをする際に一種の快楽物質が脳内で流れています。
これが脳内麻薬の役割を果たしている為に、非常に治療が時間がかかり、厄介なのです。
ギャンブル依存症で無い人は借金の恐怖感が上回り、ギャンブルへ必要以上に手を染めないのですが、ギャンブル依存症の人は単にギャンブルでの勝ち負けだけでは無く、ギャンブル時の快楽の方が重要なのです。
これにより借金が膨れ上がっていっても止める事が無く、社会や家族から孤立化していくという傾向があります。
家族からもあきらめられたギャンブル依存からの回復
ギャンブルに熱中する人はお金と時間を無駄に浪費する以外に、人間関係において大きなマイナスが発生します。
ギャンブラーとしての日常と、健全な日常生活は両立し得ないんですね。
ここでギャンブル依存症の人が、家族からどう見られているかをご紹介しましょう。
以下の文章は、ギャンブル依存症の人の親による執筆です。
家族にギャンブル依存症の人がいる方、身のまわりの物が無くなったり、お金が無くなったりはしていませんか?
ギャンブル依存症になると、頭ではいけないとわかっていても、コントロールができなくなるんでしょうね。
お金や物を借りるような感覚で持っていかれてしまいます。
ギャンブラーはギャンブルをせずに耐えることができないから、後先考えずに拝借するんですね。
しかしギャンブルなんかで稼ごうなんて、甘いことです。
すぐに全部無くなってしまって言い訳してくるんですよ。
自分が悪いとは思ってないのでしょうね。
でもそれで理屈が通るわけがありませんよね!
私はもう子供を信用することができません。
だから、どんなことがあっても、最初からお金を持たせません。
人を信用しないというのは辛いですが、ギャンブル依存症の人にお金を任せるのは、泥棒の手伝いをするようなものです。
ギャンブル依存症の人は、お金についての思考が信用ならない状態にあるので、無駄に信用しないようにしてください。
あと家の中の見つかりそうなところにお金を置かないこと。
家族が留守の時に家中を探して、お金を見つけられてしまいます。
貴重品や、換金できるものは見つかるところには、置かないようにしましょう。
また、寝ているときや、風呂に入っている時も信用できないので鍵をかけて管理するか、肌身離さないようにしましょう。
とにかく信用するより先に、悪事を働かせないことを優先して考えてください。
無いものはとれないのですから。
もはや家族のことを盗人を見るような目でしか見られない状況になっていますね。
ギャンブルを優先してしまう人というのは、大なり小なり人との関係にひびが入っているのはほぼ間違いないでしょう。
このように、ギャンブルは関わり方を間違えるとお金や時間だけでなく、人生の全てを破壊してしまう可能性を秘めているのです。
ギャンブル依存症から立ち直るには
ギャンブル依存からの回復において、家族にとって大切な心構えは、本人が回復に向けて自助グループに参加することや、借金の問題に向き合うことについては【主体性】が重要である事を認識することです。
そして、ギャンブル等依存症が病気であることを理解し、本人の健康的な思考を助けるようにしましょう。
借金の肩代わりは、本人の立ち直りの機会を奪ってしまいますので、家族が借金の問題に直接関わることのない方が良いです。
また、早い段階で、専門の医療機関、精神保健福祉センター、保健所にギャンブル依存症の治療や回復に向けた支援について、相談してみましょう。
借金の問題に関しては、消費生活センター、日本司法支援センターなどの窓口に、借金の問題に家族はどう対応すべきか相談してみましょう。
家族だけで問題を抱え込まず、家族向けの自助グループにも参加してみるのも良いと思います。
ここまで述べて来た通り、ギャンブル依存症は病気です。
脳の病気に分類されます。
また本人だけでなく、家族の支援が必ず必要になって来ます。
今は各種機関が準備されていますので、まずは訪問する事が何よりも大事です。
直ぐによくなるような病気ではありませんので、長期的に家族と一丸になり取り組んでいくことが大事です。
ですが完治するかはさておき、改善できない病気ではないので、早急に取り組み始めてみてください。