良くわかる妙鉢
お葬式で導師が音の出る【鳴り物】使用しているのを見たことがあるでしょう?
大きな大鈴(ダイリン)や木魚などが有名ですが、楽器の様な物もあります。
特に有名なの物が、シンバルによく似た鳴り物です。
神妙な場でいきなりガシャーンとやられて、椅子からひっくり返りそうになったなんて方もいるかも知れませんね。
今回はそんなシンバルもどきの正式名称や読み方、使用する意味や理由、良く使う宗派などを詳しく解説していきましょう。
みんなのお葬式体験談
遠い親戚のおじさんのお葬式のお話。
うちの母方の実家は九州のある小さな島の小さな町で、隣近所みんな親戚というようなこじんまりとした田舎です。
島とは言っても私が小さい頃はその島と本土を結ぶ定期船があり、お盆や正月、ゴールデンウィークなどでも気軽に遊びに行ける場所でした。
名前は知らないけどよく見かけるおじさんが亡くなったので、葬儀で島に渡り町に一つの小さなセンターと呼ばれる建物へ。
小さかった私は母の膝の上、周りの大人たちが泣いているのでおとなしくしていないといけないと思いじっとしていました。
そしてお葬式が始まりました。
センターの入口からお坊さんが入ってきて祭壇の前に座ります…
この時に気付きました。 お坊さんが座る中央の椅子の隣に、椅子がまだいくつか並んでいることに。
小さいとは言え何度か葬式には出たことがある私はその椅子の数に違和感を覚えましたが、一番最初に入ってきたお坊さんのあとにゾロゾロと数人のお坊さんが続きそれぞれの椅子へ。
そして中央に座っていたお坊さんがお経を唱え始め、しばらくすると脇に座っていたお坊さんがシンバルの様なものをシャーンと鳴らしました。
それに呼応するように周りのお坊さんたちもそれぞれ手に持った楽器(だと当時の私は思いました)をシャンシャカ叩き始めるではないですか。
唖然とその様子を見ていましたが、周りの大人が誰も何も言わずただ静かにお経(と楽器)を聞いているのがとても異様な気がしました。
しかしその内に、そのシリアスな光景が逆に面白くなってしまい、笑うのを必死にこらえていた記憶があります。
三十路になったつい最近まで忘れていたのですが、昨年叔父が亡くなりその葬儀も数人のお坊さんが楽器を演奏したのでふと思い出しました。
そういう宗派らしいですね…。
なおお布施の額でお坊さんの数は増える、とのことでした。
宗教と楽器
神道における【雅楽】や、キリスト教におけるパイプオルガンなど、宗教と楽器はとても深い関係にあります。
神仏に音楽を奉納する、彼らの注意を引く、或いは邪気を払い、心を清めるなど様々な意味合いがあると言われています。
仏教と音楽
仏教の場合、元々はお釈迦様が亡くなった時に、鳴り物を鳴らしたのが起源と言われています。
現在日本の仏式葬儀で見ることの出来る鳴り物は、主に中国文化の影響を受けたものです。
仏式葬儀と妙鉢
シンバルの様な物は、【妙鉢】と言います。読み方は(みょうばち)です。
略して【バチ】と呼んだりもしますし、【ドラ】などと呼ぶこともあります。
仏教においても本来は巨大な【ドラ】などを用いていたようですが、さすがに持ち出しには向かないため、小規模な楽器が考案されたと言われています。
ですからお寺の本堂などには大きなサイズのものがありますが、葬儀場で目にするものは、コンパクトな簡易サイズの鳴り物になります。
妙鉢を使う意味と理由
先述の通り、神仏に音楽を奉納する、彼らの注意を引く、或いは邪気を払い、心を清めるなど様々な意味合いや、リズムを取る目的からですが、その他にも仏の登場の効果音としても有効です。
ボワ〜ン!
宮廷で王様が登場するシーンや神々が降臨するシーンなど、とにかく凄い存在の登場時や退出時には、派手な効果音が付き物です。
そう!あれです!
また、音は何かの始まりと終わりを知らせたり告げたりするのにも、頻繁に使われますよね。
葬儀や法要、あるいはもっと細かく、その中の特別な儀式の始まりや終わりを告げるために使われる場合もあります。
演奏方法
二つの妙鉢を擦り合わせた後、打ち鳴らして使用します。
細かな演奏方法や使用するタイミングは、各宗派によって異なります。
妙鉢を使用する宗派
妙鉢を積極的に使う宗派としては真言宗や曹洞宗が有名です。
もちろん日本の仏教の大本である天台宗でも、そこそこ使用されます。
また、臨済宗や稀に浄土宗や日蓮宗などの宗派でも用いられることもあり、日本における仏式の葬儀では幅広い宗派で使われていると言えるでしょう。
臨済宗と鈸(ばつ)
仏具としては妙鉢と呼ばれることが多いのですが、楽器としての名称は【鈸(ばつ)】となります。
特に臨済宗などではそのまま【鈸(ばつ)】と呼んだり、素材の名前を用いて【 銅鈸(どうばつ)】と呼んだりすることが多い様です。
もちろん基本的には妙鉢も鈸も同じものを指します。
複数の僧侶
折角なので、最後に僧侶が大勢で来る場合の葬儀にも触れておきましょう。
メインの僧侶を【導師】【住職】などと呼び、お付きの僧侶を【脇導師(わきどうし)】【式衆(しきしゅう)】【伴僧(ばんそう)】などと呼びます。
本来は導師が作法に入り、お経が途切れてしまうのを防ぐために、脇導師がお供として葬儀に参加するのが正しい形と言われています。
しかし残念ながら現在では殆どの場合、僧侶の数はお布施の額に比例しています。
稀に複数の僧侶を抱えている寺、特に夫婦や親子で僧侶をしているお寺などは、お布施の額にかかわらず複数の僧侶で葬儀に臨むお寺もあります。
現代においては、本当に希ですが・・・
いずれにせよ『地獄の沙汰も金次第』と言ったところでしょうか・・・
ちなみに山門不幸(住職やその配偶者・親・子供などの葬儀)などでは、多くのの僧侶が葬儀を執り行う場合が一般的です。
大本山など寺格の高いお寺の山門不幸ともなれば、10人を超える僧侶がお勤めを行う場合もあります。
あまり見かけない光景でしょうが、まさに圧巻ですよ。