徹底解説!潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎ってどんな病気なの?
安倍総理も悩まされている、潰瘍性大腸炎。
原因から治療法まで、徹底解説していきましょう。
難病指定されている疾患
ざっくりと言うと、大腸に炎症や潰瘍ができる病気ですが、完治は難しく真の原因もよく分かっていないので、我が国の難病に指定されています(特定疾患)。
この病気の患者さんはこの10年間でおよそ2倍に増えていて、現在およそ17万人の人が潰瘍性大腸炎という診断を受けています。
なぜ近年急増しているのかは明らかではないのですが、食生活の欧米化やこの病気の認知度が上がって診断がつきやすくなったからではないか、と言われています。
安倍総理も中学生の頃から症状があったにも関わらず、診断がついたのは25歳となっています。長く診断がつかないと言うのは、何かと不安で苛立ったことでしょう。
主な症状
下痢や粘液便や血便がメインです。
粘液便と言うのは、白い鼻水のようなものが便に付着している状態を言います。
下痢が1日に5回も10回も起きるというケースも、珍しくありません。
潰瘍性大腸炎の患者さんは異口同音に『駅のトイレの場所やショッピングモールのトイレの場所は、全部知っています。この病院内のトイレの場所も、全て把握しています』などと言います。
また、職場では『Aさんが見当たらない時は、たいていトイレだよ』などと言われているようです。
その他の症状
それ以外にも、腹痛やお腹の不快感、食欲不振や疲れやすさ、発熱や貧血などになることもあります。
完治
大半は、寛解と再燃を繰り返します。
根本的な原因が分かっていないので、『治る』という表現は使いません。
薬で症状をうまく抑え込んでコントロールすることは可能なので『寛解』や『完全緩解』という言葉を使います。
『寛解』は、症状の芽は出ていない状態と言っても良いでしょう。しかし、もしかしたら土の中に根っこは残っているかもしれません。
根っこに栄養を与えてしまうようなことをすると、また芽が出てしまうリスクもあるのです。
根っこに栄養を与えてしまう事とは、まさにストレスや過労などだと言えます。
再燃と言うのは、また症状が出て来ることです。
安倍総理の新聞報道やニュース報道を見ていると、『再発』という記載が多いですが、厳密にはこの表現は正しくありません。正しくは再燃です。
再発と言うと、一旦は治ったということになりますが、すでに述べたように、治ったのではなく寛解していただけなので、再発ではなく再燃が正解です。
潰瘍性大腸炎の特徴の1つに、寛解と再燃を繰り返すというのがあります。活動期と寛解期を繰り返すと表現する専門家もいます。
良くなったり悪くなったりする、ということです。
同じ病名でも、症状の強さや治療薬への反応などは人それぞれで十人十色です。ほぼ治った状態に近い人もいれば(完全緩解)、寛解と再燃を繰り返してつらい想いが続いている人もいます。
検査
『そういえばよく下痢をするけど、潰瘍性大腸炎の症状なのかな?』と気になった人もおられることでしょう。
もしも潰瘍性大腸炎の疑いがある時は、どんな検査を受けなければならないのでしょうか?
採血をして血液検査を行います。炎症の状態を示すCRPなどが上昇していないか、貧血になっていないかなどを見ます。
便検査では、血便の有無だけではなく、便中に「カルプロテクチン」という物質が増えていないかなども調べます。
その他、大腸内視鏡で直接、腸の中を見るという検査も必須です。
治療/薬
完治が難しい病気ではあるものの、治療法はいろいろとあります。
軽症の場合は【5-アミノサリチル酸剤】という薬で炎症を抑えます。安倍総理もアサコールという【5-アミノサリチル酸剤でコントロールしていたようです。
【5-アミノサリチル酸剤】は、副作用が少なく長期間使えるというメリットがあります。この薬は日本で40年程前から使われている薬で、癌化を抑える効果もあると報告されています。
『安倍総理に効果があったアサコールを僕にも投与してください』などと、主治医にお願いする患者さんも増えているそうですが、安倍総理に効いたからと言って、他の人にも効果があるとは限りません。症状が十人十色なら、治療法も十人十色です。
中等症では【5-アミノサリチル酸剤】に加えてステロイドや免疫抑制薬を使うことも多いです。
重症ともなると、抗体を阻害するバイオ製剤を使ったり、時には大腸を全摘出する手術を行うこともあります。
また近年では、血液をいったん体外に抜き出して、その中から大腸に悪さをする白血球だけを取り除き、再び体内に血液を戻すという「白血球除去療法」と呼ばれる治療法も行われています。
白血球除去療法は、潰瘍性大腸炎の患者さんの40~50%に効果があると言われている治療法です。
癌化のリスク
罹患(りかん)期間が長いと、癌化するリスクも高くなると言われています。
大腸に限らず、長期間炎症が続くということは、癌化しやすいリスク要因となるのです。
さいごに
症状は一人一人違うので、安倍総理がどの程度の病状だったのかは分かりませんが、それにしても大変な病気であることには変わりありません。
ある意味、安倍総理の最大の功績は、『難病患者でも、これだけ働ける人もいるのだぞ』ということを示してくれたことかもしれないですね。
多くの難病患者が、『あんなに働ける人もいるんだ』と思ったことでしょう。
国会やメディアで何かと叩かれ批判されて蹴られて、ストレスも大きかったことでしょう。
海外に行けば、体には良くない食事もあります。
まあ、安倍総理の場合は私たちと同じように診察券を受付に出したり再診受付機に入れたりすることもなく、待合室のソファに長時間座って診察の順番や会計や処方箋が出るのを待つことなく、病院に到着したらそのまま主治医の待つ診察室に直行できるのだろうけど・・・
そして、体調に異変があったり何か気になることがあった時は、24時間365日主治医に直電で相談できるのだろうけどね。
辞任後は、潰瘍性大腸炎の患者会などで無理のない範囲で活動して、少しでも難病患者の生活の質(QOL)が向上するようにしてほしいものです。
難病患者は生活保護になってしまう人も少なくないと思うのですが、難病指定病院なのに生活保護の人は受診できないという病院も少なくありません。
長年診ていただいていた主治医がいるにも関わらず、生活保護になったからと転院しなければならない患者さんもいました。
そういったことも、解決できるようにしてほしいものです。 何はともあれ、安倍総理、お疲れさまでした。