【メタノールとエタノールの違い】中毒・治療方法・致死量・死のメカニズムまで…

メタノールの飲用中毒死

ベテランの葬儀屋スタッフとお酒を飲みながら、メタノールの飲用中毒により死亡した人の葬儀の話を聞いた。

お酒に入ってるのはエタノール、飲んだら二度とお酒が飲めなくなる可能性があるのがメタノール。

名前が似ているため、しばしば比べられる二つの物質について、用途・特徴・世界における中毒例・治療方法・致死量・死に至るメカニズムなどについてまとめてみた。

エタノール(エチルアルコール)概要

普段私たちが口にするお酒に含まれるアルコール。体内で無毒化されるので、過度の摂取に気をつければ死ぬことはない。

食用以外にも、有機溶剤や消毒剤として様々な工業製品に利用されている。

尚、食用・医薬用以外のエタノール(工業用アルコール)は、毒性の極めて高いメタノールとの混合材であることが多く、飲用することは大変危険である。

化学式

【メタノールとエタノールの違い】中毒・治療方法・致死量・死のメカニズムまで...

用途

酒(アルコール飲料)・みりん・接着剤・塗料・インク・農薬など。

【メタノールとエタノールの違い】中毒・治療方法・致死量・死のメカニズムまで...

メタノール(メチルアルコール)概要

燃料などに使われる工業用のアルコール。毒性は非常に強い。

化学式

【メタノールとエタノールの違い】中毒・治療方法・致死量・死のメカニズムまで...

用途

燃料・殺虫剤・接着剤・ホルマリン・価格樹脂など。

昔懐かしいアルコールランプの燃料はメタノール。

絶対に飲んではいけません!

色・味・臭い

残念ながら純度の非常に高いメタノールは無色透明で、臭いもあまり強くない。

専門家いわくお酒に混ぜられたとすれば、色や味が変わることはほとんどないため、まず気付くことは難しとのこと。

奥さんの入れてくれたその焼酎の水割り、大丈夫ですか?

※2016年3月10日、夫にメタノールを飲ませ殺害したとして妻の大川房子被告が逮捕されている。

税法上の扱いと価格

メタノールは工業用の化学薬品であるため、嗜好品としての「酒類」には分類されない。よって酒税の対象外となっており、酒類であるエタノールに比べて安価で手に入る。

毒性

国から毒性の高い【劇物指定物質(毒物)】として分類されており、取り扱いには注意が必要だ。

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致死量

純粋なメタノールは劇物に指定されるほど毒性が高く、成人の場合個体差が大きいが30ml~100mlが致死量、10ml程度で失明するとされる。

中毒症状

視力障害が広く知られており失明するケースも多い。致死量を超えての摂取は、もちろん死亡する。

死のメカニズム

お酒(エタノール)は大丈夫なのになぜメタノールはダメなの?

これがおおかたの人間の疑問だろう。

もちろんエタノールも人間の体にとっては毒物だ。しかし、エタノールは体内のアルコール分解酵素によってアセトアルデヒドに分解(代謝)され、さらに酢酸(お酢)へと分解される。

ではメタノールはどうだろうか。こちらもやはり同じアルコール分解酵素により速やかに分解される。こちらの場合はアセトアルデヒドより毒性の強い、ホルムアルデヒドに分解される。

このホルムアルデヒドが問題だという意見もあるが、ホルムアルデヒド自体は速やかにギ酸(蟻酸)に分解されるため、それ自体はそれほど問題ではないようだ。

では何が問題かというと、実はこのギ酸。ギ酸はその名のとおり蟻の一種が持つ毒液に由来している。

このギ酸に対する代謝能力が低い霊長類には、その分解までに多くの時間を要することになる。結果身体に人体に大きなダメージを与え、最悪の場合死に至らしめる。

まとめるとエタノールは限界値を越えなければ体内で問題なく分解・排出されるが、メタノールは分解されたときに作り出される毒物(ギ酸)により、人体に多大なダメージを与えるということになる。

【メタノールとエタノールの違い】中毒・治療方法・致死量・死のメカニズムまで...

各国におけるメタノール中毒

前述の通り安価なため、戦後の日本でも闇酒(密造酒)として闇市などで広く販売されていた。そのため数多くの失明者や死者を出しており、その特性から「目散る(メチル)アルコール」や、「バクダン」などと呼ばれて恐れられた。

現在の日本でこそ遠い過去の出来事とされているが、世界を見渡せば貧困国を筆頭に飲用による事故が絶えない。

近年ではインドで殺虫剤などからメタノールを取り出して作られた変性アルコールによる死者が急増しているほか、2014年にはロシアで密造酒のアルコール濃度を高めるためにメタノールが混入されたウォッカを飲み、14人が死亡した。

治療方法

誤って飲んでしまった場合は落ち着いて対処することが大切だ。

メタノールが吸収されるまでの時間はおよそ1時間。毒物が体内に吸収される前に吐くなどしてして、 まずは出来るだけ体外に出してしまおう。

嘔吐以外に最も簡単で有効な手段はエタノールの大量摂取。つまりお酒を飲むことだ。先述のとおり体内でアルコールを分解する酵素は同じもの。

一度に摂取されるアルコールの量が多ければ多いほど、それだけ分解されずに体外に排出されるアルコールの量は多くなる。

メタノールは分解(代謝)され、ギ酸に変化しなければ中毒は引き起こされない。高いアルコール濃度のお酒をたくさん摂取するというのは意外な方法だが、非常に有効な方法だ。

やはり最後はアルコールが人類を救う・・・

嘔吐で出来るだけ排出したら大量のアルコールを摂取、その後病院で速やかに胃洗浄などを行おう。

また、高度な治療方法としては人工透析などを行い、メタノールを取り除くなどの方法もあるが、いずれにせよ「飲まない」のが一番であことに違いはない。

お酒とメタノール

余談だが実は私たちが普段飲んでいるお酒にもメタノールが含まれている。

人体に重大な損害を与えない程度の量だが、そもそもメタノールはエタノールに比べ、その分解には、実に10倍の時間を要すと言われている。

普段良く目にする種類ではワイン・ブランデー・ウィスキーなどに比較的多く含まれているが、その中でも特に赤ワインにはメタノールが多く含まれており、これが悪酔いする原因だとも言われている。

もっともワインに限らずお酒の飲みすぎには、くれぐれも気をつけましようね。

それと・・・

奥さんにも・・・

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