納棺師の見る光と闇
映画『おくりびと』ですっかり注目を浴びた納棺師。
しかし、現実は映画の様に素晴らし世界だけとは限りません。
どんな世界にも華やかな表向き(光)の世界と、怨霊渦巻く闇(裏)の世界があります。
納棺師のもとに届いた驚愕の依頼!あなたはこの現実に耐えられますか!?
私と納棺師の体験談
酷く動揺した母親から電話があったのは、いつものごとく突然のことだった。
大学生の息子が事後で死んだと、突然聞きなれない警察から電話がかかってきた。その場で死亡が確認され、現在遺体は警察に安置されているが、(損傷が激しい為)顔を見ることは出来ないと担当刑事からは言われている。
辛うじて聞き取れた内容を整理すると、そんなところだ。
指定された時間に、管轄の警察に遺体を引き取りに行く。
遺体の損傷は想像以上に激しいモノだった。 驚いたことに、顔面は縦にバックリ裂けていた。
派手に叩かれ、ふたつに割れる寸前のスイカ割りの『スイカ』か、中身を見せるために中央からふたつに割りかけた『肉まん』と言えば、おおよそ想像がつくのではないだろうか。
割れ目から脳味噌や顔面内部の見えてはいけないものが、しっかり確認出来る。
顔面が割れてしまったことにより、顔の皮膚が両サイドに流れ、泥流の様に不気味にダブついている。
これはダメだ。対面などさせられる訳がない。
念のため霊安室で別のご遺体のメイクをしていた納棺師にも相談してみたが、
『ここまで酷いとさすがに・・・』
そう言って、申し訳なさそうに首を横に振った。
母親の葛藤は相当なモノだったが、最後には【面会しない】ことに、心を決めたことは有り難かった。
見ない方が良いに決まっている。
しかしもって、これからようやくという年まで育てた息子が、突然事故死して、顔が真っ二つになってしまったからと、最後の面会すら叶わない。
母親の胸中、察するに余りある。
ふと、ひとりの母親の言葉が思い出される。
その母親は、数年前に小学生の娘を難病で亡くした。
発症して3年、懸命に手を尽くしたが、力及ばす、家族に看取られながら静かに息を引き取ったそうだ。
『私の娘は、究極の孝行娘です。だって、もう親に何の心配もかけないんですもの』
そう言ってその母親は、寂しそうに微笑んだ。
親の心配は、子供にとっては、この上なく煩わしい。
しかし、私も人の親だ。親になって初めてわかることがある。
懐妊をすれば、途中で死んでしまわないかと気を揉み、産まれるとなれば、無事に産まれてくれるかとハラハラし、産まれてからは乳児突然死に怯え、動く様になってからは、ハイハイが人より遅いのでは無いかと心配し、本当にこのまま無事成長してくれるのだろうかと疑心暗鬼になり・・・
四六時中、まさに寝ても覚めても、子供の心配ばかりしている。
『もう一切の心配をかけない、親孝行者』
もちろん半分は強がりだろうが、案外半分は本心だろう。
特に闘病中の3年間は、それこそ1秒たりとも気が休まる瞬間はなかっただろうから、尚更そう感じるのかも知れない。
今日もTVからは暗いニュースが流れてくる。
やれ幼稚園児が車に轢かれて亡くなっただの、やれ小学生が給食を喉に詰まらせて死亡しただの、やれ中学生が海で溺れて命を落としただの、やれ大学生がバイクで事故死しただの、やれ新社会人が自ら命を絶っただのと・・・
そうしたニュースを見るたびに、ウチの子供は大丈夫だろうかと不安になる。
もちろん心配し続けて、何もなく自分が順番通りに先に逝くことを望んでいるわけだが、一体いつまで子供のことを心配し続けなければならないのかと、気が遠くなる思いがあることもまた偽らざる本心だったりする(この辺りはきっと、どの親もそうだろうが…)
そんなことをふと考えさせられた、今回の依頼だった。
そうとは知らずベットで無邪気な寝顔を見せる息子は、私と妻の心配をよそに、今日も好き勝手やりたい放題だった。
【親の心子知らず】とはよく言ったものだ。
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苦しい胸の内を誰かに聞いてもらいたい。表に出すことで少しでも楽になれるのなら・・・
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苦しい胸の内を誰かに聞いてもらいたい。表に出すことで少しでも楽になれるのなら・・・『あなただけじゃないのよ』同じ苦しみを持っている人に、そんな声をかけてあげたい。少しでも楽にさせてあげられるなら・・・どんな些細なことでも構[…]
【色すなわちこれ空なり】