徹底解説!少年法
刑罰の軽さと実名報道についての議論が白熱する未成年の凶悪犯罪。
最近で未成年による殺人なども珍しくはなくなったが、見直される日本の殺人罪における未成年(少年)の刑事訴訟と刑罰。
日本において少年の保護・厚生に重きを置いた「少年法」に守られた少年に対する判決は、成人のそれと比べてどう違うのか?
川崎市中1男子生徒殺害事件を元に検証してみる。
川崎市の多摩川河川敷で中学1年生(当時)が殺害された事件。
殺人罪などに問われた19歳のリーダーの少年(事件当時は18歳)に、横浜地裁は懲役9年以上13年以下(不定期刑)の判決(求刑は10年以上15年)を言い渡した。
日本における殺人罪の刑罰
では早速殺人を成人が犯した場合、どのように裁かれるかを見ていきたい。
◆死刑
- 言わずと知れた日本の最高刑
- 死刑確定から執行までの拘束期間はおよそ8-9年程度。
- 死を持って罪を償うとの観点から、刑務作業等は無い。
◆無期懲役
- 期間の定められていない懲役刑
- 生涯牢獄の中を意味する「仮出所なしの(絶対的)終身刑」とは意味合いが異なる。
- 30年経った時点で仮釈放申請が認められるが、即刻認められるのは難しい。
- 現在、出所までの平均拘束期間は30-35年程度。
- 仮釈放が認められたとしても、その時点で刑期終了ではない。正確な刑期終了は死亡時。
年度ごとに見る無懲役受刑者が仮出所までに要した時間は以下の通り。
2010年が35年3月
2011年が35年2月
2012年が31年8月
2013年が31年2月
2014年が31年4月
◆有期刑
- 期間が定められていない無期懲役に対して、期間が明確に定められた懲役刑。
- 法改正により上限が引き上げられ、現在の上限は30年。
- 『被告を懲役○○年の刑に処す』(いわゆる有期懲役刑)
- 仮釈放申請は刑期の3分の1終了時点(現実的には3分の2との情報あり)
少年法
成人犯罪者に対する刑罰が罪を償わせることを目的にしているのに対し、少年法は少年犯罪者の保護更生を目的としており、人権保護、量刑緩和など未成年犯罪者に対する様々な配慮を規定している法律。
少年法の量刑緩和
当然ながら、成人に比べて少年法の量刑は軽い。
◆量刑
- 死刑→無期懲役
- 無期懲役→無期懲役 or 10年以上15年以下の有期刑(裁判官が判断)
- 不定期刑の採用 刑期に幅を持たせる懲役(禁錮)刑。成人の有期刑に比べ、刑期は格段に短くなる。
有期刑と不定期刑の違い
重大犯罪における少年法の適用区分
一般的に責任能力と更生の確率は年齢と反比例すると考えられるため、基本的に年齢を考慮しない成人とは違い、少年法の量刑は年齢により適用区分が異なる。
◆0歳~10歳
刑事責任年齢(刑罰)対象外の為、原則いかなる刑事処分にも問われない。
◆11歳~13歳
刑事責任年齢対象外だが、重大犯罪などの場合は少年院送致が可能。
◆14歳~17歳
刑事責任年齢対象。成人と同じ裁判が可能だが、量刑は少年法により減刑される。
成人に比べて一段低い刑罰が科せられる為、必然的に死刑は適用できない。
少年院、少年刑務所に送致。
◆18歳~19歳
少年法により保護される。
ただしこの年齢から成人と同じ刑罰を科すことも出来る為、死刑が適用可能。
川崎市中1男子生徒殺害事件

加害者に前科が無く、殺害された被害者が1人であっても死刑が有りうるという、いわゆる永山基準が撤廃されたとはいえ、18-19歳の未成年による犯罪は依然として成人の刑罰に比べてはるかに軽い。
事件の内容から見て成人なら無期懲役だろうが、上記の『少年法の量刑緩和』から分かる通り、求刑は10年以上15年以下の不定期刑となった。
判決はさらに低い9年以上13年以下の不定期刑が言い渡された。
少年法が最大限適用された以上、重きを置かれるのは『罪を償うこと』ではなく、『更生並びに社会復帰』だ。
良い子ちゃんを演じれば、最速9年で娑婆に復帰できる。
また、法律上有期刑の場合は刑期が3分の1を超えれば仮釈放が可能になる。実際は3分2だとか、複雑な規定があるようだが、要するに数年で出てくる可能性があるのではないだろうか?
感情論を抜きして考えれば、成人が犯人の場合、恐らく死刑はないだろうから、量刑は無期懲役だろう。
そうなれば30-35年は娑婆に復帰できない。20歳で刑務所行きとなったと仮定して、出所は50過ぎ。肩書きは殺人犯。上記のとおり無期懲役とは解釈法の時点で刑期が終了するものではない。刑期が終わるのは『死亡した時点』だ。
その人次第だが、大半の殺人犯にとって、もう人生終わったようなものだ。
ところが少年法に守られた今回の犯人は、刑期が終了した状態で、25-30歳手前で出所する。その後結婚して、幸せな家庭を作ることも可能だろう。
自分の大切な人の命を、その将来を奪った犯人が、のうのうと幸せに生きている。遺族にとってはたまらない心境だろう。
犯行当時の主犯格の年齢は18歳。
18歳と20歳
たった2年弱の違いが、文字通り雲泥の差を生む。
新たに18歳が選挙権を獲得し、18歳という年齢は十分に罰を受ける年齢に足る年齢だとして、大人と同じ刑罰を課すべきだとの意見があるが本質はそこではない。
罪を受けるに足る年齢かどうかだけを考えれば、18歳は十分にその年齢にあると私は思う。
だが問題は、
少年法が犯罪を犯した未成年の保護と厚生を目的にしている以上、どの年齢まで人格の厚生、更にはその後の社会復帰に重きを置き、どの年齢から厚生よりも罪を償わせることに重きを置くのか?
ということだ。
非常に難しい問題だが、ひとつだけ言えることは、この世から殺人がなくなれば、そんな馬鹿げたことを議論する必要など無くなる事は間違いない。