フォルクスワーゲンの失敗に学ぶ
フォルクスワーゲンが、排ガス不正問題に苦しんでいる。
売上・台数・利益・・・
全てにおいてトヨタを抜き去り、名実ともに世界一にならなければという焦りが、ドイツの雄を、自動車史上類を見ない犯罪へと掻き立てた動機だと言われている。
ここに一冊の本がある。
『利益なんて二の次で良い。世の中の人の役に立てれば れで良い!』
きれいごとだと言われるかも知れませんが、日々数字に追われる営業マンにとっては、神の言葉 ですよね。
昔、私が駆け出しのIT系コンサルの営業マンだった頃の話。
時はIT業界がイケイケの時代。
そこそこの規模の会社で、営業マン同士の売上や出世争いも非常に激しかった。
兎に角数字を上げて、まずは会社に認められたいとの思いとは裏腹に、私はなかなか思うような数字があげられずに焦っていた。
そんな時、上司が私にこんなことを言ってくれた。
その言葉を聞いてなお、営業マンは数字が命だと思っていた私は、
そう言って、一丁前に食い下がった。
すると上司は僕に厳しい口調で、こう言い放った。
この言葉はとても当時の私の心に深く響いた。
それからの私は思うように数字が上がらず苦しい時も、常にこの言葉を忘れず、お客様のことを第一に考え、営業活動に励んだ。
そんなある日、前からアプローチをかけていた企業から、大型案件の商談をいただきました。
数百万円かけて会社のとあるシステムの入れ替えを検討しているのだが、 数社で相見積もりを取っているので、同じようなシステムをすぐに提案してほしいとのこと。
それ以降何度も訪問し、打ち合わせを重ねた。
しかし、私は最初からある疑念があった。
それはその会社にとって、検討中のシステムが不似合いだということだ。
ワンマン社長が他社の営業マンにそそのかされて、システムの刷新を検討。
私はその会社に何度も通って、管理や営業の人間と仲良くなっていた。
社内の環境を非常に詳しく把握していたいた為、そのシステムが社員にとっては、業務をより煩雑化するだけの、 無用の長物を通り越して、百害あって一利無しのシステムであることは重々承知していた。
しかしワンマン社長には誰も意見出来ない・・・
悩んだ末に私が出した結論。
それは・・・
そう。システムの導入自体を見送るという提案でした。
買う気のない人間にモノを買わせるのも大変ですが、買う気満々の人間に買わないよう説得するのは、それ以上に大変なものだと、この時始めて思い知らされた。
4時間にも及ぶ説得の末、システムの導入は一旦見送りになった。
その後、何度か足を運び、システム導入の案件は完全にとん挫した。
散々費やした時間をドブに捨て、社長自ら音頭を取っていた大型案件はぶち壊し。
あれだけ画期的なシステムだと騒いでおきながら、不要だと渋々納得せざるを得なかった、社長のメンツはまる潰れとなり、それ以降私はその企業への出入りを見事禁止された。
システム導入を完全に中止させた日、疲れて崩れるように椅子に座りこんだ電車の中で、そんなことを考えながら、私はなぜか晴れ晴れとした気分だったことを覚えている。
22時過ぎに会社に戻ると、上司が待っていてくれた。
私が商談はダメだっとと伝えると、上司が僕に一言。
いつの間にかハードルが異常に高くなっていた。
世の中の厳しさを知った、ITコンサルタント一年目の終わり・・・
その後、社長が引退して月数日しか出社しない、代表権を持たない会長になり、息子である専務が社長になった時点で、見事私の出入り禁止も解除された。
その後は独占的な外部コンサルタントとなり、大いにその会社の売上アップや業務効率改善に協力させてもらったが、もちろん同時に私自身の売上にも、多大な貢献をしてもらった。
専務が社長になるにあたって、会長が専務に言った言葉だそうだ。
そのことを新社長から聞いたときは、不覚にも涙が出そうになってしまった。
『うちには優秀なコンサルタントがいる!お前の話など聞かん!』
たまたま会長の出社時に飛び込み出来た営業マンに向かって、会長が怒鳴っていただなんて嬉しい話を、秘書から聞いたりもしたっけ。
もちろんこの会社の他にも、右も左も分からない時分、利益度返しで必死になってコンサルさせていただいた多数のお客様がいたが、その後皆私に全幅の信頼を置いていただき、数字は何倍にもなって返ってきた。
お陰様で、最後は現場営業の責任者にまで昇りつめることができた。
今ならあの時上司の言った、一見相反するように見える「利益第二主義的第一主義」とも言うべき事の意味が、少しは理解出来る気がする。
話を元に戻すが、今回のフォルクスワーゲンによる排ガス不正問題は、ドイツ人としてのプライドの高さや、結果しか追い求めない企業体質が生み出したものだと言われる。
しかし、対岸の火事とタカをくくってばかりもいられない。
何かと厳しい世の中にあって、すぐにでも成果や結果が求められる時代。
ともすると一方的な利己主義や単なる利益第一主義に走ってしまい、あっという間に奈落の底にたたき落とされないとも限らない。
企業人としての誇りを守る為にも営業マンとしての結果を残すためにも、敢えて『利益第二主義』を貫きたいものだ。
結果は必ず後からついてくるのだから。