【北海道5人刺傷事件考察】悪質な自動車事故で人を殺した人間は本気で「殺人罪」も検討するべきだと思う理由

ひき逃げと刑罰

「人の命を奪う」という行為。背景や状況に応じて裁かれる法律も異なる。

業務上過失罪・傷害罪・殺人罪・・・それぞれの特徴と現状の問題点を、自動車事故を通して考えてみる。

北海道砂川市の交差点で、乗用車と軽自動車が衝突。軽自動車に乗っていた一家4人が死亡した事件事件。

乗用車とRV車が無謀なカーチェースを繰り広げ、時速130㌔程度で赤信号の交差点に侵入。交差点を横切ろうとした軽乗用車と衝突。乗用車に乗っていた一家5人のうち3人が死亡した。

更に車外に放り出されれた男性を後続のRV車が巻き込み、路上を1.5㌔ひきずった後、逃走。男性は死亡が確認された。残る一人は重体。

刑法概要

  • 過失(致死)罪・・・誤って人を殺めてしまった時に適用される。人を傷つける意図(故意性)は一切無し。
  • 傷害(致死)罪・・・暴力を振るった結果、死亡させてしまった場合に適用される。殺意はないが、傷付ける意図は有り。
  • 殺人罪・・・明確な意図(殺意)をもって人を殺害した場合に適用される。
  •  国家反逆罪関連・・・所謂クーデター関連の法律。状況に合わせていくつか存在するが、今回のテーマにおいては関連が薄いので詳細は割愛する。

「危険運転致死傷罪」と「自動車運転死傷行為処罰法」

悪質な自動車事故が多発する現状に手を打つべく、厳罰化の流れが進んだ。現在ではどちらも独立した法律となっているが、元々は自動車運転死傷行為処罰法は「過失罪」、危険運転致死傷罪は「傷害罪」に分類されていた。

「過失罪」と「傷害罪」の一番の違いは、相手を傷付ける明確な意図、つまり「故意か否か」という点にある。

麻薬・酩酊状態などでの運転は、厳密に言えば「故意」で人を傷つけようとした訳ではないだろうが、「故意」とみなされても仕方ないというのが、法律の言わんとするところだ。

未必の故意 

最後に「傷害致死罪」と「殺人(未遂)罪」の違いを見てみたい。

これは言うまでもなく明確な「殺意」があったかどうかだ。「殺そうと思って殺した」ならば殺人罪、「かっとなってぶん殴ったら死んでしまった」ならば傷害致死罪だ。

傷害致死罪とは一言で言えば「傷付ける意図はあったが殺すつもりはなかった」という訳だ。

だが、刑法には「未必の故意」という考え方がある。

確定的に犯罪を行おうとするのではないが、結果的に犯罪行為になってもかまわないと思って犯行に及ぶ際の容疑者の心理状態。

殺人事件の場合、明確な殺意がなくても、相手が死ぬ危険性を認識していれば、故意として殺人罪が適用される。

コトバンク

『友達と旅行に行くので乳幼児を1週間家に閉じ込めて外出し、帰宅したら餓死していた』

『ムカついたので同僚を会社の冷凍庫に閉じ込め、数日後に開けたら凍死していた』

こうしたケースは殺意がなくとも、通常殺人罪が適用される。

「故意」の解釈範囲

一旦整理をすると自動車の致死事故において通常は単なる過失として過失罪に問い、度を超える悪質な運転の場合は、例え本当は人を傷付ける意図がなくとも、殺意まではいかないレベルで人を傷付ける意図があったと見なす訳だ。

だが実際はどうだろうか?

40㌔程度のスピードでも、車は十分に人を殺すことが可能だ。車が「走る凶器」だということは、小学生だって知っている事実だ。

100㌔以上のスピードで暴走行為を続け、挙げ句の果てに赤信号を無視して交差点に突っ込む。恐らく無視した赤信号も、事故を起こした交差点だけではなかったはずだ。

結果的には信号を守って正しく運転していた軽乗用車に追突し、何の罪もない3人の命が失われた。

更にカーチェースを繰り広げていたとされる後続のRV車は、軽乗用車から放り出された男子を1.5㌔に渡り引きずりった挙句、放置して逃走。男子はひき逃げにより死亡が確認されたが、引きずられながらも2分程生存していこととが確認されている。

更にRV車の運転手は飲酒していたことも判明した。

この期に及んで『自分達が事故を起こすなど想像もつかなかった』などという言い訳が通用していいのだろうか?

『人を殺しても良いと思いながら走っていた』と言われても仕方がない。

知人が『目隠ししながら刀を振舞わしているのと何ら変わりはない』といった趣旨の発言をしていたが、全くその通りだ。

いや、むしろスピードが遅く、逃げられる分、まだそちらの方がマシだと言いたい気分にすらなる。

事故に対する厳罰化の流れが加速したとは言え、より罪の重い「自動車運転致死傷罪」の適用すら尻込みする姿が目に付く昨今の法廷。

悪質な「ひき逃げ」も含め、こうした事件は見ようによっては立派な殺人だ。

本当に死刑が適当なのかは、分からないし、即刻死刑にすべき、などという極端な議論を繰り広げるつもりもない。最後はどの様な罪が妥当なのかは、司法が判断することだ。

だが本当にこうした犯罪数の軽減や撲滅を掲げるのならば、「自動車運転致死傷罪」の積極的な適用は勿論、未必の故意をもって「殺人罪」での立件も視野に入れた、積極的な司法判断が必要なように思えてならない。

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