葬儀と写真撮影のマナー
時々この様な質問を受けます。
スマホやデジカメの普及によって、誰でも手軽にキレイな写真が取れる時代。
遺族や親族は勿論のこと、一般の会葬者も祭壇や会場の様子を撮影することは、もはや当たり前の光景となりつつあります。
流石に一般の会葬者の方が、勝手にご遺体の写真まで撮る事はありませんが、遺族の中にはご遺体を撮影する人の姿も、かなり頻繁に見られるようになりました。
【祭壇/遺影写真/手札写真(焼香台の上にある小さな写真)/位牌/遺体】
この辺りが定番の撮影対象です。
前置きが長くなりましたが、結論から言えば、
OKです!
地方によっては風習などで、NGという場合もあるのかも知れませんが、一般的には問題ないでしょう。
一部の特殊な宗教までは分かりませんが、仏教/神道/キリスト教など、基本的にメジャーな宗教であれば、宗教の教義的にも問題はありません。
葬儀屋としては、『どうぞご自由に』というのが本音です。
但し、やはりデリケートな問題でもありますし、実際に揉め事に発展するケースもありますので、やはりある程度の配慮は必要なように思います。
注意点
以下に葬儀の撮影における注意点を示しておきます。
撮影許可
大きなトラブルの原因は何といってもこれです。
基本ルール
故人や喪主の叔父(叔母)/従兄弟/遠い親戚などが勝手に遺体の写真を撮り、ご喪家や他の親族と、揉め事になるケースが散見されます。
自分がご喪家の人間ではない場合、必ず喪主を中心とするご喪家と話し合い、遺族/親族の総意として撮影することを決めてもらいましょう。
また、例え喪主であっても自分が故人から見て甥(姪)など、故人の直系ではない場合は、他の親族との関係によっては、事前に話し合っておくことも必要でしょう。
僧侶
僧侶によっては式中にカメラを使用することそのものを嫌がる、或いは事前の許可を義務付けている方もいらっしゃいます。
作法/読経/弔辞/お別れの儀・・・それぞれどのシーンで撮影が可能/不可能かを葬儀屋の担当に確認してもらいましょう。
事前アナウンス
神経質な親戚がいる場合には、葬儀屋に頼んで、開式前の前説時に、撮影がある旨を全員にアナウンスしてもらうのも良いでしょう。
撮影者
撮影者の選定も大きなポイントです。
丁度良い距離間の親戚
親戚(直系でもなく、遠すぎる訳でもない親戚の男性がベスト)
『甥』『姪の配偶者』『従兄弟』『娘婿の兄弟』などなど・・・
兎に角ある程度親戚だと認識で出来て、喪主様や故人の孫など、あまりにも近い直径の親戚でなければベストでしょう。
葬儀スタッフ
適任の撮影者がいなければ、葬儀屋のスタッフに撮影をお願いしましょう。
ただしスタッフの増員が必要になる場合は、別途人件費がかかる場合がありますので、ご注意ください。
プロのカメラマン
できるだけきれいに残しておきたいのであれば、プロのカメラマンを手配するのもひとつの手です。斎場の様子から(希望があれば)遺体、お通夜、告別式、出棺、食事まで、ご希望に応じて撮影してくれます。
料金は拘束時間に比例して、高くなります。
もちろん時間が短くてもそれなりの値段(特にビデオカメラでの映像撮影)はかかりますので、ご予算と相談の上、葬儀社に依頼してください。
また、ビデオ撮影ともなれば、僧侶との交渉も難しいものとなりますので、事前にしっかり時間を取って打ち合わせを行いましょう。
撮影のタイミング
あまりシャッタを切る回数が多いと、他の人の迷惑になります。要所要所で適枚撮るように心がけましょう。
開式前
その地域によって若干異なるところもあるでしょうが、通常通夜の晩や告別式の朝にご喪家が会場入りする時間は、他の親族や一般の会葬者よりも早いはずです。
葬儀屋の担当にお棺の蓋を外してもらったりしながら、ゆっくりと遺体や斎場を撮影させてもらうのが良いでしょう。
自分が喪家の人間ではない場合は、事前に喪主様と相談し、同じ時間に入らせてもらって、撮影するのもひとつの手でしょう。
集合写真
親族で祭壇を背に記念写真を撮りたい場合は、通夜終了後に葬儀屋の担当に相談し、翌朝告別式前に行うのが良いでしょう。
後述するお花入れの前や出棺前に撮影を申し出る遺族・親族が多くいますが、お別れの時間が短くなってしまったり、出棺が慌ただしくなってしまうので、あまりお勧めはしません。
葬送の儀の式中
式中はそれほど撮影する箇所は多くないでしょう。
基本的に式の様子を1~2枚と、お焼香をしている参列者をカメラで残しておくのが良いでしょう。
お焼香のタイミングになったら前方脇にスタンバイして、前から撮影でも構いませんが、難しい様なら後ろから撮影しましょう。
お別れ/お花入れの儀
祭壇に飾られた花を参列者お棺に手向ける、【お別れ(お花入れ)の儀】。
故人の納められた棺が、色とりどりの花で飾られる葬儀のクライマックスは、当然人気の高い撮影ポイントのひとつ。
しかし故人とゆっくりお別れの出来る最後の機会でもあります。
参列者がお棺に歩み寄る合間をかいくぐりながら、バシャバシャシャッターを切ることは、他の参列者から 顰蹙(ひんしゅく)を買う可能性大。
枚数を控えつつ、節度を持った撮影を心がけましょう。
もしご遺体の写真を残したいなら、オススメのポイントは、一通りお別れも済んで、棺の蓋を閉める直前。
『綺麗な姿を残しておきたいので』という言葉を添えて、撮影に入ると良いでしょう。(最初に葬儀屋に伝えておくのがベスト)
更に故人のみの写真だけでなく、近しい遺族を1人~数人を一緒に入れた、写真も数枚撮っておくことをオススメします。
遺体だけの写真を一心不乱に撮っている姿は、周囲の人間に多大なる違和感を与えがちですが、そこに生きている人間が入ることで、周囲の心情をだいぶ和らげることができます。
その他
あとは喪主挨拶や弔辞、出棺時などの要所要所を適枚ずつ取っておけばOKでしょう。
撮影禁止場所
基本的に式場内は撮影OKですが、当然撮影禁止場所も存在しますので、注意が必要です。
火葬場
全国共通で火葬場は撮影禁止です。火葬炉の前や収骨室はもちろん、通路や場所によっては駐車場も撮影禁止となっています。
他の遺族が写り込んでしまい、トラブルとなるケースもあります。
基本的に出棺したら(外に出たら)、撮影はやめましょう。
最近の葬儀における撮影
最近では子供/孫/故人の兄弟くらいまでの、非常に近しい遺族/親族だけが集まって行う葬儀が増えました。
言うまでもなくこれくらいの近親者だけならば、誰に気兼ねする必要もありません。
多くの遺族/親族が祭壇の写真や遺体を、自由にパシャパシャやっています。
これが最近の葬儀の特徴でしょうか。
いずれにせよ葬儀の規模や自分の立場によって、どこにどう気を遣うかは大きく異なってきますが、状況をしっかり把握し、周囲に配慮しながら、素敵な写真を残してくださいね。