良くわかる【釘打ちの儀】
あなたの地域は【釘打ちの儀】はしますか?
今回は柩(棺桶)の蓋に釘打ちをしなかったばかりに起こった珍?事件を参考に、釘打ちの儀について解説していきます。
みんなのお葬式体験談
友人から聞いた話です。
友人の祖母の葬儀での出来事です。友人の祖母の宗派により、棺に釘を打たないという宗派だったそうです。
葬儀の日、台風の接近により強風で、告別式後棺を運んでいるときに突風が吹き、なんとお官の蓋が開いてしまったそうです。
友人は思わず笑ってしまい、友人の父と あーあ、ばあさんよっぽどこの世に未練があるんだなぁと言って笑ってしまったそうです。本当に不謹慎です。
そして会場から火葬場へ向かい、霊柩車から棺を出した時にまた突風が吹き、また蓋が外れてしまったそうです。親族みな不謹慎ながら笑ってしまったそうです。
その後も何度か危ない目にあったそうで、 やはり台風が接近している時は釘を打つべきだねぇと親族同士話したそうです。
誠に不謹慎ですが、悲しいだけでなく、少し笑わせてしまうようなおばあさまの葬儀。
それも96歳まで生きた大往生ならではだと思います。
それにしても台風の接近中での葬儀は本当に大変だったと思います。おばあさまのご冥福を心よりお祈りいたします。
ひと言
大変な目にあわれましたね・・・
でもおっしゃるように年齢も年齢ですし、暗くなるよりよっぽど良かったのではないでしょうか。
ちなみに葬儀が始まる直前に突然大雨、一旦止んで、出棺前に大雨。
『よっぽどあっちに逝きたくないんだな~』
葬儀の場でこの手の会話はテッパンです!笑
長寿の葬儀はお祭り
良く言われることですが、ご長寿の方の葬儀は『よく頑張った!有難う!』の気持ちで故人を浄土に向けて盛大に送り出してあげる【門出のお祭り】です。
妙にかたくならず、必要以上に悲しい雰囲気を出さずに、自然に、時には笑顔で送り出してあげるのが本来のあり方でしょう。
釘打ちの儀
遺族や近しい参列者が、出棺の前に棺の蓋を釘で打ち付けて留める儀式のことを、【釘打ちの儀】と言います。
釘打ちの儀をする理由
通常金メッキされた釘を使って、遺族/親族、近しい参列者が少しずつ石を使って釘を打ち、最後は金の金槌でしっかりと留めます。
では何故わざわざそんなことをするのでしょうか?
蓋が取れないように
昔は人が担いで棺を墓所や火葬場まで移動させたため、途中で蓋が取れてしまっては大変です。
まさに上記の体験談の様な、悲劇?が起こってしまう訳です。
死者が柩から出てこないように
昔は遺体が穢(けが)れていると考えられていました。
また、死者が生者をねたみ、悪さをするとも考えられてきました。死者が柩から出られぬよう、石と釘を使って柩の蓋を閉じるのです。
石は釘を打つための単なる道具ですが、漬物石に代表されるように、何かにしっかりと重しをし、鎮める役目があります。
ですからその石の持つ力にあやかる意味もあって、釘を打つのに使用するのです。
故人との決別/けじめを付ける
現在最も重要視されているのがこの理由です。
自らの手で釘まで打つことで、【自らの意思(石)】で死者と決別し、【区切(釘)り】を付けるため。
三途の河原の石に見立てたこぶし大の石で釘を打ち込みます。
死者を鎮め、自らの心を鎮める為に石で打つとも言われています。
釘打ちの儀の現状
宗派によってやる、やらないもありますが、最近は地域性によるとことが大きいように感じます。
東京近郊では99%やりません。
ごくたま~にものすごくこだわっているお寺さんがいて、やる場合もありますが、100件やって1-2件有るかないかのレベルでしょう。
風習としての釘打ちの儀は完全に廃れ、お寺さんのこだわりによって細々と残っているといったところでしょうか。
しかし、上記のような理由があるのですから、本当はやるべきだと思います。
全力で悲しませ、全力でけじめをつけさせてあげる。
しっかりと死者と決別し、前を向いて歩いて歩いていける力添えをしてあげることこそが、僧侶の重要な役目のひとつであり、葬儀屋の最も大きな使命だと思うんですよね。
などと寝ぼけたことをいう葬儀スタッフが大半ですが、死者はあの世への苦しい旅の途中か、浄土で仏になるための修行の真っ最中です。
葬儀がどんどん簡略化されていくのは、遺族や会葬者の負担が減って良い様ではありますが、その実あまりよろしいことではありません。
もちろんそれを率先して先導しているのは僧侶や葬儀屋なんですから、悲しい限りですが…
若者を中心に宗教離れが著しいと嘆いてばかりいないで、もっと他にやることがあるのではないかと常々思ってしまいます。
さて、未来の葬儀や如何に・・・?